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■ 9月26日 ■
 キィキィと軋み、響き渡る金属音。
 人気のない公園に夕陽が落ちる。
 ブランコが揺れて、再び甲高い音が鳴る。
「……この歳になってブランコって、超テンション上がるな」
「それは拓也だけだと思うけど……」
 他愛ない言葉を他愛なく交わす。その時間の重みに気付いていないわけでもないが、今更友人同士の会話から何かを得ようとする程強欲にもなれなかった。
 少年達は、二人──学校からの帰り道、何とはなしに、帰り道の途中に放置されている公園へと立ち寄っていた。
 鞄を適当な場所に放り出し、子供の頃散々遊んだブランコへと乗り込んで、もう三十分近く経とうとしている。
 立ち乗りのまま、錆び付いた音を響かせて、拓也は遠い街並みを眺めていた。

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テーマ : 自作恋愛連載小説
ジャンル : 小説・文学

■ 9月25日 ■
 どうにもならない現実と、どうしようもない空想と。
 世界を構成する要素は、主にその二つだと思っている。少なくとも、竹井知之にとってはそうだった──幾度となく現実を相手に挫折と敗北を繰り返し、空想に逃げ込んでも結局時間の無駄でしかないことを思い知らされる。成長期を過ぎて伸びきることなく終わった身長も、それに合わせたかのような童顔も、何もかも自分の思い通りにはならなかった。今はもう抗う気力すらなく、現実に妥協し、折り合いをつけて生きている。
 そうして生きていけると信じていたのだ。
 あの、世界終局宣言が発令された日までは。

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■ 9月24日 ■
 今宵月の下でほんの小さな
 願い事を一つ叶えて欲しい

「参ったなあ……千秋、やっぱ駄目みてえだ、世界、滅びるって」
「だから何度もそう言ってるでしょ!? いいからパン焼くの手伝ってってばあ!」
「食うのは得意なんだけどさ、焼くのって苦手なんだよねえ」
「ああもう、うるさいうるさい。あのね、お客さんがいる以上、うちは店終いしない方針なんだから、早くこっち来て手伝いなさい」
「それ終わったら抱き締めていい?」
「なんでもしてあげるから、早く来てってば!」

 すれ違う時間とか
 後悔とか
 神様の悪戯は、今日はもうヤメにして

「あと一月で生まれるんだよな」
「うん。誰がなんて言ったって生んでやるんだから。昌子先生も、必ず取り上げてやるって約束してくれたんだからね」
「……なんの希望もない世界だけど、きっと俺達にとっては希望になるだろうな」
「うん。ひょっとしたら、その子が生き残るかもしれないし?」
「おまえの子供だからなあ……図太いところは似たりしてな」
「ちょっと、宗二郎さん、それはどういう意味で言ってらっしゃるのかしら?」

 ハーヴェスト・ムーン
 もっとはやく
 逢わせてよ、甘いmyあの人に
 愛なんて
 言葉持って
 秋の空、影絵を映して

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■ 9月23日 ■
 分厚く垂れ込める黒い雲。秋空だというのにその重量は空恐ろしく、見上げているだけで胸をむかつかせる何かに満ち溢れている。閉塞し終焉を迎える世界への苛立ちから、かろうじて経営を続けていたスーパーの店主が行方不明になっていたことまで含めて、あらゆる不幸と不条理は空から降ってくるのではないかと思えた──実際のところ、降ってくるのは湿気を含まないさらりとした大粒の雪ばかりなのだが。
 雪は深々と降っている。
 アスファルトは白無垢に覆い隠されていた。
 凍える程でもない中途半端な寒さに震え、拓也は一人、自宅へと続く道の半ばで立ち止まった。見慣れないものを見つけたからだ。見慣れないし、これから先見慣れる予定もない代物だ。
「……何だ、これ」
 車の通れないような細い路地に。
 転々と、雪だるまが立っていた。

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■ 9月22日 ■
 神様の存在を信じたことが全くない、と言えば嘘になる。その程度の分別は拓也にもあった。子供の頃は素直にサンタを信じていたし、全く同じベクトルで神様がいると信じていたように思う──サンタも神様も何もかも、目に見えない全てを同列に信じることができていた時期は、間違いなくあった。勿論年齢が二桁になる頃には物事の裏側に気付き始め、人並みに落胆し、人並みに納得したものだったが。
 今思えば、不思議としか言えない──あれだけ真っ当に神様を信じていたはずなのに、それがいないとわかった瞬間、拓也は何故それを素直に受け入れることができたのだろうか。もっと絶望すべきではなかったのか──泣き喚いて神の不在を嘆き、受け容れ難い現実に苦悶するような、そんな瞬間があって然るべきではなかったのだろうか。

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プロフィール

神楽坂司

Author:神楽坂司
世界が終わる。
無慈悲に優しく、無造作に哀しく。
無意味に虚しく、無感動に冷たく。
世界は終わる。
終わりの中で初めて紡がれていく、優しくて哀しい人々の絆。避けられない終局を前にしたとき、彼らの選択はこの世界に何を残していけるのだろうか──?

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