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■ 9月26日 ■
 キィキィと軋み、響き渡る金属音。
 人気のない公園に夕陽が落ちる。
 ブランコが揺れて、再び甲高い音が鳴る。
「……この歳になってブランコって、超テンション上がるな」
「それは拓也だけだと思うけど……」
 他愛ない言葉を他愛なく交わす。その時間の重みに気付いていないわけでもないが、今更友人同士の会話から何かを得ようとする程強欲にもなれなかった。
 少年達は、二人──学校からの帰り道、何とはなしに、帰り道の途中に放置されている公園へと立ち寄っていた。
 鞄を適当な場所に放り出し、子供の頃散々遊んだブランコへと乗り込んで、もう三十分近く経とうとしている。
 立ち乗りのまま、錆び付いた音を響かせて、拓也は遠い街並みを眺めていた。
「……俺、拓也に憧れてたんだ」
 不意に、知之はそんなことを呟いた。
 拓也は特に驚いた様子もなく、ブランコを前後に揺すり続けている。
「いっつも、クラスのみんなが騒いでるようなときでも、なんていうか……クールって感じでさ。遠くから、じっと冷静に見てるような感じがして、凄いヤツだなって思ってたんだ」
「……いや、そりゃあ俺が駄目人間だっただけだろ。話の輪に入れないだけで」
「ははっ……言うなよ、そういうこと。今、良いこと言ってたのに」
「男二人で何言ってんだか。ホモかっちゅうの」
「馬鹿言ってんなって。俺、春奈先生がいるもん」
「ノロケ地雷警報、ノロケ地雷警報。緊急退避、緊急退避」
「……うるさい」
「緊急退避、緊急退避」
「うるさいっ」
 他愛ないことでも笑いあえる。
 そんな時間は、とうの昔に失ったと思っていたけれど。
 忙しすぎて、ただ気付かなかっただけ。
 目の前にある現実が忙しなくて、見えない振りをしていただけ。
 誰だって、友達とは笑って話をしたいし、少しだけ恥ずかしいような気持ちを抱くこともある。
 ただなんとなく、口にしないだけ。
 それだけだ。
「天使化症候群、か」
 小さい言葉は、だから他愛なく金属音をも切り裂いた。
「……うん」
「それでも、先生は一緒に暮らしてくれるって?」
「うん」
「嬉しいんだろ? 悲しいけど、いつか終わる幸せだけど、それでも死ぬほど嬉しいんだろ?」
「うん……うん」
「それじゃあ、その関係を受け入れろよ。いつかはみんな終わるんだし、幸せになれると思ってるけど、いつかはみんな死に行くんだし、おまえがその関係を精一杯受け入れろ。大丈夫だよ、先生はおまえが最後の恋人で幸せなはずなんだからさ」
 終局を迎えた世界の中で。
 それでも、最後に残せる気持ちがあるのなら。
「……やっぱり、拓也は凄いよな。なんていうか、達観しててさ」
「おまえが子供なんだよ。顔も」
「顔のことは言うなよ……これでも気にしてるんだからさあ」
「そういう事実も受け入れて、さあ、メシでも食い行くべ。うまいラーメン屋見っけたんだ」
「麺類、苦手なんだけどな……」
「おまえ、そういや麺類食うと咽せるんだよな。あれ一体何のつもりなんだ?」
「何のつもりって……しょうがないだろ。そういう体質なんだよ。喉に絡むの」
「喉まで子供なのか。大変だなあ」
「だから、子供って言うなってば!」
 多分──友情も、最後に残せる気持ちの一つ。

 世界が滅びるその日まで、あと百と五日。

テーマ : 自作恋愛連載小説
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

神楽坂司

Author:神楽坂司
世界が終わる。
無慈悲に優しく、無造作に哀しく。
無意味に虚しく、無感動に冷たく。
世界は終わる。
終わりの中で初めて紡がれていく、優しくて哀しい人々の絆。避けられない終局を前にしたとき、彼らの選択はこの世界に何を残していけるのだろうか──?

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