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■ 1月1日 ■
 年が明けたからといって、何が変わるわけでもない。
 二人の歩みが終わることもなく、世界の終わりが突然停止するわけでもない──相変わらず雪は降り続け、軌跡によって削られる箇所も随分と増えていた。吹雪の中を歩き回るだけでも体力を使うが、間違って終わりの欠片に衝突しないよう気を配るのも疲弊を誘う。手を繋ぎ、拓也が先導する形で歩く──細長く伸ばした鋼線で歩ける道を探る作業は、ひどく単調ではあったが、だからこそこれまで二人を生き長らえさせてきた。
 死体とも、天使とも、他の奇病に冒された患者達と出会うこともない。
 当然、自分達以外の生存者と出会うこともなかった。
 世界中でただ二人だけになったかのような錯覚を味わいながら、幾筋も白く切り取られた街並みを遠く眺める。もちろん拓也と美雪しか生存者がいないわけではない。年が明けようとするまさにその瞬間、除夜の鐘が鳴り響いたのを聞いている。危険も顧みず、世界最後の祈りを高らかと空に打ち上げた者達がいるのを知っている──誰もが皆、懸命に生きているのだ。
 最後の瞬間に向かって。
 最後の一瞬まで生きようと足掻く。
 それは決して虚しいことではない。人間として生まれてしまった以上、何をどうしたところで死ぬのは怖いのだろう。少なくとも拓也は、あと一週間で避けられない死が訪れるという事実に怯えきっていた。磨り減った感情が表に出てこないだけで、美雪がいなかったら人目も憚らず泣き喚いていたに違いないのだ。
 ──だから。
 怖いから、生きる。
 怖いから、歩き続ける。
 動いている限り、死を避けられそうな気がするから。
 歩いている限り、どこかに辿り着けそうな気がするから。
 だから拓也は、歩みを止めない。
 もうどこにも辿り着けないのだと、心のどこかで気付いてしまったとしていても。

 世界が滅びるその日まで、あと七日。

テーマ : 自作恋愛連載小説
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

神楽坂司

Author:神楽坂司
世界が終わる。
無慈悲に優しく、無造作に哀しく。
無意味に虚しく、無感動に冷たく。
世界は終わる。
終わりの中で初めて紡がれていく、優しくて哀しい人々の絆。避けられない終局を前にしたとき、彼らの選択はこの世界に何を残していけるのだろうか──?

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