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■ 1月5日 ■
 はっきりと――足音が聞こえた。
 そんな気がする。
 もう、何もかも終わってしまう。
 それが悲しいことなのかどうか、拓也には判断が付かなくなっていた。
 情報は磨耗する。
 現実ではいつもそうだ──情報は必ず磨耗し、忘れ去られていく。
 そうならなかったものだけが過去として蓄積され、余計な記憶として刻み込まれる。
 悲しみも──苦しみも。
 磨耗して擦り切れたはずなのに、涙が止まらない。
 過去の蓄積など、何の役にも立ちはしない。
「美雪……」
 傷ついて、辛そうに唇を噛み締める少女の痛みを、どうして自分は救ってやれないのだろうか。
 こんなに悲しい世界の中で、恋する気持ちだけは綺麗だと信じていたのに。あまりにも綺麗すぎたその気持ちは、耐え難い痛みも一緒に引き連れてきた。
 ただ大切で、守りたくて、それも叶わなくて──あまりの情けなさに、泣くことしかできない。
 今更に思い知る。
 美雪と共に過ごした時間が、本当に楽しかったのだと。
 美雪と共に生きることで、自分は深く救われていたのだと。
 本当に今更だと悔やんでも、時間が戻ることはない。
 いつでも人間はそうだ。
 後になって愚痴をこぼす。
 抱えきれない後悔と共に歩むことしかできない。
 だが、そうだったとしても──わかっていても悲しみは嫌で、苦しかったり痛かったりするのは我慢できなくて。
「……拓さん、いる……?」
 握り締めたその手の冷たさに。
「馬鹿……いなくなるわけ、ないだろ──」
 ──精一杯の強がりしか、残せない。

 世界が滅びるその日まで、あと三日。

テーマ : 自作恋愛連載小説
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

神楽坂司

Author:神楽坂司
世界が終わる。
無慈悲に優しく、無造作に哀しく。
無意味に虚しく、無感動に冷たく。
世界は終わる。
終わりの中で初めて紡がれていく、優しくて哀しい人々の絆。避けられない終局を前にしたとき、彼らの選択はこの世界に何を残していけるのだろうか──?

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