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■ 10月13日 ■
『──命は続かない。子孫はいつか途絶え、種は滅び、生態系は必ず壊滅する。自然界において、摂理とはつまりそういうものなのだ!』
『環境保護をお題目に唱える連中は、揃いも揃ってこう唱和する──生態系を守れと!  何という愚かな言葉だろう? 生物は、進化を迎えるたびに以前の生態系を破壊してきたではないか。我々人類は、今その時期を迎えただけなのだ。わざわざ森を伐採するほどのことでもなく、わざわざ森の伐採をやめるほどのことでもない。受動的に、変化を迎え入れていくこと、それだけが求められている!』
『断言しよう!! 子孫はいつか途絶え、種は滅び、生態系は必ず壊滅する。自然界において、摂理とはそういうものだ。我々は今、その時期に当たったという、それだけのことなのだ。終局を迎え入れずに抗うことは、愚かでしかない! 我々は融合しなければならないのだ──同一の目的に向かって融合しなければならない!! そのための病を、迎え入れなければならない! 我々は──』
 ぶつり、とラジオの電源を切って。
 まるで意味不明だと顔全体で表現し、拓也はゆっくりと美雪の方へと向き直った。
「……何だこれ」
「拓さん、知らないの? こないだラジオジャックした、新興宗教の人達だよ」
「知らねぇなあ。しかし、何が言いたいんだか全然わからん。そもそもこれって宗教なのか? 勧誘とかしてなくね?」
「私もよくわかんないけど……何だかね、『世界が滅ぶのは裏太陽の裏におわす神様が決めたことで、それに抵抗したりしてはいけない』んだって。裏太陽の裏って、結局表じゃないかなって思うけどね」
「裏の裏だろ? そりゃ表だよな。あーでも参ったな、この時間帯のラジオ、結構楽しみにしてたのに。どうしたもんかな」
「拓さん、散歩に行こうよ。今日はあったかくって散歩日和だよ」
「あー、確かに、あったかいよなー……眠くなるぐらい……」
「くー……」
「っておまえが寝てんのかよ!」
 宗教に縋りたくなる気持ちもわかる。
 宗教を毛嫌いする気持ちもわかる。
 ただ、少なくとも二人には必要のないものだった──拓也も美雪も、それぞれの中で世界が完結している。他の誰にも入り込めないほど強固に、徹底的に。神や信仰の入る余地すらなく、彼らの世界は彼らの中だけで完成してしまっていた。
 だから、二人はいつもと変わりなく過ごしていけるのだ。
 変化の足音が、少しずつ近付いてくることに気付いていながらも。

 世界が滅びるその日まで、あと八十八日。

テーマ : 自作恋愛連載小説
ジャンル : 小説・文学

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神楽坂司

Author:神楽坂司
世界が終わる。
無慈悲に優しく、無造作に哀しく。
無意味に虚しく、無感動に冷たく。
世界は終わる。
終わりの中で初めて紡がれていく、優しくて哀しい人々の絆。避けられない終局を前にしたとき、彼らの選択はこの世界に何を残していけるのだろうか──?

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