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■ 11月3日 ■
「……昨日思ったんだ。お互い撃ち合えば、大丈夫なんじゃないかなって」
 そっと拳銃を手渡して。
 手渡す美雪も、手渡される春奈も、二人とも同じような表情で見詰め合う。他にできることなど何もない──ただ、世界の不条理に振り回されるしかない。間近となった終わりの時間を、もう先延ばしにする権利すら失われてしまっていた。
「……こんなん、どこで拾ったんだ?」
「橋の下で貰った。その人達は、片方を撃って、もう片方は私に任せてくれたけどね。あなた達なら、二人一緒に撃てるかもしれないって思って……多分昨日の二人は、それができない怖さもあったんだと思う。いざというときに、怖じ気づくんじゃないかって。それが嫌で、できなかったんだと思うけど」
「……そりゃそうだ。死ぬのが怖くない奴なんていないべさ」
 白く凍りついた吐息と共に拳銃を受け取り、春奈は静かに目を細める。懐のものと、合わせて二丁。二人分の弾丸が、彼女の胸を重くきつく締め上げる。せめて伝う涙に気付かない振りをするのが、美雪にできる精一杯だった。
「秋川君にさ、頼んでくれんかな。多分、明日か明後日ぐらいだから……うちに来てって」
「……もし、拓さんが断ったら?」
「断らないよ。あいつはそういう奴だから。そういう奴だから、私達が最後に甘えるのさ」
 春奈の家の玄関先で、二人は降りしきる雪を背景に、痛みの言葉を分かち合う。
 家の中。
 恐ろしく静かな家の中。
 まるで、人の気配など感じられず。
 暗く──ただ暗い、静まりかえっているだけ。
 天使が眠ってるみたいだね、と美雪はきっと春奈に見せる最後の微笑みを浮かべた。
「お互いに撃ち合ったりとか、それができなかったりとか……そういうのは、どうでもいいよ。後悔しないように、お幸せにね」
「ああ。幸せに死ぬことだけが、唯一してやれる唯一の約束だ。ごめんな……本当はもっとちゃんと謝りたいんだけど、多分そのとき私は死んでるんだ」

 世界が滅びるその日まで、あと六十六日。

テーマ : 自作恋愛連載小説
ジャンル : 小説・文学

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神楽坂司

Author:神楽坂司
世界が終わる。
無慈悲に優しく、無造作に哀しく。
無意味に虚しく、無感動に冷たく。
世界は終わる。
終わりの中で初めて紡がれていく、優しくて哀しい人々の絆。避けられない終局を前にしたとき、彼らの選択はこの世界に何を残していけるのだろうか──?

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