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■ 11月11日 ■
 激烈な痛みに悶える。
 頬が火花のように痛みを明滅させた。
 暗く閉めきった部屋の中で、拓也は声を殺して歯を食いしばる。握りしめた掌に、丸めた背中に、冗談のように大量の冷や汗が滲んだ。麻酔せずに抜歯され続けているような感覚──肉体で最も敏感な部分が抜け落ち、剥がれ落ちていくような激痛。思考は鈍り、意識を逸らすことすら許されない。頭の中を、痛い、助けてという文字だけが埋め尽くす。
 痛い。痛い。痛い!
「……助けてくれ」
 頬に浮き出たニキビのような鉄の塊は、大きな棘のようになっていた。既にガーゼだけでは隠しきれず、触れるだけでも皮膚を裂いて血を流させる。棘は時間を追うごとに成長しているようで、今も少しずつだが伸び続けていた。細かく枝分かれし増殖さえしている──終局に蔓延る無数の奇病について、拓也も全てを知っているわけではないが、それでもこんな症状の出る病気は聞いたことがなかった。
「……助けてくれ──」
 頬が、どうしようもなく痛い。
 鉄が周囲の皮膚に刺激を与え続けている。
 ──痛い。
 ぽろぽろと、床に落ちる──無数の鉄クズが折れたはずの左腕から生えて、床に落ちる。
 皮膚を破り、鮮血を撒き散らし、鉄釘や鋼線、歯車、捻子、針、ボルト──無数の鉄製品が溢れて床を埋め尽くしていく。
 尋常な光景ではなかった。
 とても見せられたものではない。
 誰にも見せられない──特に、美雪には絶対に見せられない。
 見せたくない。
 心配をかけたくないからではなく。
 こんな醜い姿を見せて、嫌われるのが怖いから。
「……美雪」
 隣の部屋で眠っている少女。
 血の繋がりもなく、ろくに過去も知らない。友人とも呼べない気がしたし、単に住み着いているだけの他人とも言える。
 それでも拓也にとって、深沢美雪という少女は決して失うことのできないものだった。
「──約束……したもんな」
 約束したのだ。
 終局が訪れるその日に、ラーメンを食べにいくのだと。
 その日まで、美雪には何も心配をさせたくないから。
「……痛え──痛えよ、畜生、痛い、痛い、痛い……!」
 だから拓也は一人で泣くのだ。

 世界が滅びるその日まで、あと五十八日。

テーマ : 自作恋愛連載小説
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

神楽坂司

Author:神楽坂司
世界が終わる。
無慈悲に優しく、無造作に哀しく。
無意味に虚しく、無感動に冷たく。
世界は終わる。
終わりの中で初めて紡がれていく、優しくて哀しい人々の絆。避けられない終局を前にしたとき、彼らの選択はこの世界に何を残していけるのだろうか──?

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