FC2ブログ
≪11  2018-12/1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31  01≫
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
■ 12月8日 ■
『──ょう、隊長、き……すか、──長。通信──ずおちです、……電波、──確保、困難です……の連絡だけ、緊急にお……います』
「──水落か。水落、そのまま喋れ。こっちに返事はしないでいい。何があった?」
『……、──例の女の子、……、──んしました。目撃情……って、──行ったんですけど、まずいです……あいつ、手から──鉄──、……にしと、江口が、やられました──俺もすぐ追いつ──』
「……水落。通信機を捨てて逃げろ──もういい、十分だ」
『無理──す、隊長……俺も、……れてますから。長く……い、──す。隊長──駅前の、……、──マンショ──……ん階、……ガキと女の子は、多分まだ移動して──いです』
 ざりざりと──金属の表面を削るような音が響き渡る。
 誰も、何も話さない。
 一台の通信機を前に、臨時駐屯地で待機していた全員が沈黙を守り続ける。
 雪が降り積もり、冷気が肌を刺し、風が頬を叩いても──誰も、何も話さない。
 視線は通信機に注がれたまま、白く染まっていく世界に遺される言葉を聞き逃すまいと耳を澄ます。
『隊長──俺は多分もう……けど、あの秋川ってガキと──女の子と、……一緒に、終局を迎えさせてやりましょう──隊長、……きっと──れたち、……天使やゾンビ……そういうのじゃなくて──そのためですよ、隊長。あいつらに終局を見せて……そのために、今死ぬだけなんです……そのために、生きて──……さようなら、隊長』
 沈黙が、下りる。
 閉幕しても悲劇は続く。
 洋介も拓也も、嫌と言うほど経験してきたことだった。今まさに大切なものが失われていった気配。二度と取り返せず、後悔の速度ですら追いつけない。涙を流すこともできずに空を見上げ、洋介は瞼にまで積もる雪を乱暴に振り払った。組み立て式の椅子から腰を上げ、機関銃を掲げてその場の全員へと届かせるための声を絞り上げる。
「全隊通達! 駅前のマンションを虱潰しに探せ!! ただし無理はするな──発見したら、最低限の監視だけ残して、後は一度ここに帰投しろ! 今更無駄死にしたってな、誰も褒めちゃくれねえぞ──」
 ──そうだろう、
 ──なあ、秋川拓也。
 呼びかけに。
 拓也は、血管の浮かぶ双眸を吊り上げて頷く。
「……俺が殺します。俺にしか殺せません──水落さんの最後の通信でわかりました。根岸孝史は、俺にしか殺せない。だから──見つかったら、帰ってきてください。絶対、帰ってきてください。俺なんかのために……自分以外の何かのために死ぬとか、そういうのは、なしにしてください」
「……だとさ、お前ら──何が何だかわからねえが、そういうことだ。銃で武装してる俺らより、自分が適任だってこいつが言ってんだ──信じるしかねえだろう。信じて、帰ってこい──自分以外の何かのために、死ぬんじゃねえぞ!!」
「──了解!!」

 世界が滅ぶその日まで、あと三十一日。

テーマ : 自作恋愛連載小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

Secret
(非公開コメント受付中)

コメント

プロフィール

神楽坂司

Author:神楽坂司
世界が終わる。
無慈悲に優しく、無造作に哀しく。
無意味に虚しく、無感動に冷たく。
世界は終わる。
終わりの中で初めて紡がれていく、優しくて哀しい人々の絆。避けられない終局を前にしたとき、彼らの選択はこの世界に何を残していけるのだろうか──?

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
フリーエリア
QRコード
QR
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。