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■ 12月14日 ■
 それは、残り十日でやって来る。
 終局より早く、そして終局よりずっと大事なその日が来る。
 楽しみだった。
 せめてそこまで生きていたいと、美雪は心から願っていた。
 世界終局宣言が発令されてからずっと、その日が来ること夢見ていたのだ。
 だが、そのときとは少し、事情が違ってしまっている。最初は一人で過ごすつもりだった──祖母はすぐに亡くなってしまったし、家族とクリスマスを祝う気には到底なれない。クラスメイト達は皆死んでしまったり、行方が知れなかったりで、それこそクリスマスどころの話ではなかった。皆生きるのに精一杯で、お祝いしようなどと考えているのは自分のように呑気で間抜けな人間だけだろう──だから、一人でお祝いをするのだ。
 そのつもりだった。
 何があっても結局は一人なんだろうなと、漠然と思っていた。
 だが──今は、事情が違うのだ。
「拓さん! もうすぐクリスマスだねえ」
 明るく言い放ち、美雪はくるくると部屋の中で回ってみせる。
「楽しみだねっ。ケーキ屋さん、まだどこかやってるかな?」
「駅前のケーキ屋だったら、まだ営業してたみたいだけど。今度見に行ってみるか?」
 そう。
 もう美雪は、一人ではなかった。
 こんな悲しい終末に、それでもクリスマスを祝おうと言ってくれる、奇特な人間が自分以外にもいるのだ。
 そして──これが何より奇跡的だが──その人物は、自分のことを好きだと言ってくれる。
 好きだと言って、行動で示してくれる。
 これ以上の幸せはきっと、もうこの世界のどこにも残されていないだろうという確信が美雪にはあった。たとえハピネス症候群によってもたらされる多幸感でも、拓也が与えてくれる温かな気持ちには遠く及ばない。
(──やっぱり、あれかな? プレゼントとか、用意しなきゃなのかな)
 無趣味な拓也に何を贈ったら喜んでもらえるのか、悩ましいところではあったが。
 何となく──悩むことすら、楽しみな出来事に思えた。

 世界が滅びるその日まで、あと二十五日。

テーマ : 自作恋愛連載小説
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

神楽坂司

Author:神楽坂司
世界が終わる。
無慈悲に優しく、無造作に哀しく。
無意味に虚しく、無感動に冷たく。
世界は終わる。
終わりの中で初めて紡がれていく、優しくて哀しい人々の絆。避けられない終局を前にしたとき、彼らの選択はこの世界に何を残していけるのだろうか──?

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