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■ 12月15日 ■
 ちらつく雪。
 視界が真っ白に染まる。
 滅びの雪が降り積もる光景を、美雪はぼんやりと窓硝子越しに見詰めていた。無垢の白雪に、降り来る軌跡を削り取る終局の雪が混じっているのかもしれない。拓也と散歩途中で見かけた限り、この近所では三箇所、白く捻れた虚無の塔が空から地底までを穿っていた。
 ──全部あの雪に包まれたら。
 ──それが、世界の終わりなのかな。
 曇った硝子を指でなぞる。
 そこだけ切り取られた世界。
 そこから覗く世界。
 狭くて、小さくて、とても寒くて悲しい──けれど暖かく優しい世界。
「……ユッコ、元気かな」
 まだ世界が平和だった頃、仲の良かった少女。
 彼女は今どうしているのだろう。
 同級生の友達。
 部活の先輩──家族。
 今はみんな、死んでしまったのだろうか。
 それとも、自分のように、幸せな毎日を過ごしているのだろうか。
 ──私みたいに。
 ハピネス症候群。
 それは全てが幸せになってしまう病気。
 拓也と出会えたのも、この病気のおかげなのかもしれない。美雪は最近、そんなことを考えるようになった。
「拓さん──」
 ハピネス症候群。
 患者達は街を彷徨い、そしてどこかに消えていった。彼らと彼女らは皆、拓也のように素敵な人に出会えたのだろうか。
 だとしたら、こんなに素敵なことはない。
 それはきっと、人と人を繋げる病気。
 綺麗な心が重なり合って、終局を彩るために必要な病気。
 全てが綺麗に削り取られ滅びたとしても、朝露のように美しい気持ちだけを残せる、そんな病気。
 ──だったら、私は役立たずじゃないね。
 終局に欠かすことのできない、ピースの一つだ。
 そう考えると、少しだけ自分が誇らしくなった。
「拓さんっ、ラーメン食べに行こうっ」
 仏頂面で、それでも同意する少年の腕をとって。
 美雪は幸せと一緒に歩き出す。
 最後に向けて。
 最後が、優しいものであればいいと祈りながら。

 世界が滅びるその日まで、あと二十四日。

テーマ : 自作恋愛連載小説
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

神楽坂司

Author:神楽坂司
世界が終わる。
無慈悲に優しく、無造作に哀しく。
無意味に虚しく、無感動に冷たく。
世界は終わる。
終わりの中で初めて紡がれていく、優しくて哀しい人々の絆。避けられない終局を前にしたとき、彼らの選択はこの世界に何を残していけるのだろうか──?

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